粉というのは私たちの生活に欠かせないものです。
小麦粉に代表されるような食品粉をはじめ、医薬品や化学製品の原材料なんかも粉の形で流通しています。粉にすると他の素材と混合しやすくなったり、質量あたりの表面積が増えて水に溶けやすくなったり他の物質と反応しやすくなったりして何かと都合がいいからなんだと思います。
さて、この粉ですが当然ながら作るのにはエネルギーが必要です。小麦粉だったら収穫した小麦を砕いて細かくしないといけません。化学粉だったら圧力を加えたり攪拌したり脱水、乾燥したりする必要があります。
食品粉や化学粉、製造のプロセスは粉を得ることが目的なのですからそこにエネルギーを投入するのは当たり前です。
しかし切削加工はどうでしょうか。
小麦粉製造も切削加工もエネルギーを使ってモノの形を変えるというところは変わりません。違うのはその成果物です。小麦粉は粉そのもの、切削加工は粉になる部分を除いた残りの形が重要です。つまり切削加工の過程で出てくる粉は副産物なので、できればない方がいいはずですね。
切削加工では目的の形よりも大きな素材=ストックを用意してそこからエンドミルで少しずつ削っていきます。この時いかに効率的に目的の形状に達するかが技術的な課題の一つですが、加工に使うエネルギーを考えるとなるべく大きな塊で削り取っていければ効率がよさそうです。究極的には目的の形状の界面を直接カッターで切ってしまうような感じで。
2次元的な加工ではレーザー加工機で外形を切り取る行為がこれに近いことを実現しています。必要な形状とストックとの界面を焼き切ってしまえばその外側はそのまま残っていてもいい。
3軸の切削加工で3D形状を削り出す場合はレーザー加工のようなわけにはいかないのですが、それでも大きな刃物で大きな塊をざっくり引き剥がすことができれば素早く加工できて使うエネルギーが少なくて済みそうです。
大きな機械で大出力のスピンドルモーターを動かす→エネルギー大
大きな刃物で深く削る→エネルギー大、加工時間短
「大きな機械を使って大きな刃物で削った方がエネルギー効率が良い」
どうでしょう、これ成り立ちますでしょうか。
「切子が細かい=元の素材の形から大きく変形している=投入されたエネルギーが大きい」
機械が削っている間は基本的にそれを眺めているだけなのでこんなことを色々考えてしまいます。
本職の技術開発の仕事では知らない現象を扱うことも良くありますが、その現象を理解するのに「エネルギーの収支」で考えるとものごとがすっきり整理できることが多いです。
いつか切削加工でもエネルギーの観点で基礎データを取ってみたいですね。きっと加工品質とも強い相関があるんじゃないかなと思っています。
それではまた。
切削加工機:Roland MDX-50
CAMデータ作成:Autodesk Fusion360
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