モノを設計するということはどういうことなのか、そしてそれを3D-CADの中で表現するにはどうしたらいいのか、そういうお話をしたいと思います。
今回例題として取り上げるのはガラスコップです。どの家庭にもあって誰もが手にしたことがあって、その形や重量感、質感、使い勝手などそういう性質を「よく知っている」製品だと思います。
これを3D-CADで作る場合はどうしたらいいか。
一番簡単なのはコップの断面をスケッチして「回転コマンド」でぐるっと一周させることでしょう。
これですと作業としてはスケッチ1つと回転コマンド1回だけで構成でき、履歴には2つのフィーチャーが残るというシンプルなものになります。
しかしこのような簡単な作業で終えられるのは、表現すべき形が頭の中にあったり、既に図面や手描きスケッチとして存在しているからなのだと思います。つまり「設計」が既に終わっているということですね。
そうではなくどのような形にするかまだぼんやりとしていたらどうでしょうか?
今回のお話は試行錯誤を3D-CADの中で行えるようにする、設計仕様・数値を履歴の中に埋め込む、そのための手順ということになります。
要求仕様と設計仕様
さて、良く知られたガラスコップですが、この製品に求められる基本機能(要求仕様)って何でしょうか?私は次のように定義してみました。
「ある一定量の水を手に持って飲める形で保持すること」
これが実現できたら水たまりから直接口をつけて水を飲むことも、手で水をすくってこぼしながら急いで飲むこともしなくていいわけです。
液体に形を与える、これがおよそ器というものに求められる機能なんじゃないかと思います。
ではその形は具体的にどんなものか。ここからは色々なアプローチがあって然るべきですが、ひとまずはこのように設定しました。ペットボトル半分ぐらいの量の水を片手で持ち運ぶというイメージです。
容量:250 ml
直径:55 mm
高さ:105 mm
これで基本機能を具体的な設計数値にまで落とし込むことができました。ひとまずここまでを形にしておきます。
この高さのままコップを作ってしまうと規定量(250ml)の水を入れたときにすぐにこぼれてしまうので高さに20mmの余裕を持たせることにします。
側面が垂直なままだとスタッキングができませんので少し勾配(5°)を付けることにしましょう。ここでは水の容量を変えずに勾配を付ける作業を行っています。
水の形が決まったのでシェルコマンドを使って外側に厚み(1.5mm)を付けていきます。
これで機能的には水を保持できるようになりました。でも今回使うと決めている「ガラス」の特性にも配慮しないといけません。ご存じのようにガラスは非常にもろい素材です。テーブルに何回も置くわけですから繰り返しの衝撃にある程度耐える必要があります。
ここでは底面を8mm厚くすることにしました。
これでひとまず設計完了です。
製品に求められる機能を分解整理して個別の設計数値に落とし込む、それに対応する形を小分けにして作りフィーチャーの形で履歴に残す、複雑なスケッチを描かずに設計情報をヒストリーベースで分散管理する。
毎回律儀にこの手順を取る必要はありませんが、やり方を知っておくと役に立つ場面がきっと来ると思います。特に全く新しいもの、形状修正が多く入るものを設計する際には非常に有効な手法になるはずです。
具体的な操作手段をYouTubeの方にもアップしています。こちらも合わせてご覧ください。
3D-CAD:Autodesk Fusion360
Commenti